5年前のとある出来事~その7 別な病院へ搬送~

最初の病院に到着してから2時間近く経過してからしびれを切らしたように看護師さんが医師に向かってこう告げているのが聞こえた。

「先生!いい加減に救急車の手配をした方がいいんじゃないですか?」
「実は救急車が出払っていて、まだ戻っていないらしいんだ」

救急車が出払っている?戻っていない?

後からわかった事だが、私同様に大きな病院へ搬送された患者がこの日は他にもいたらしい。
静岡県内の大きな病院へは救急車で40分~50分かかるらしく往復で1時間半~2時間かかるようだ。

「先生っ!!!」
「うん・・・そろそろ連絡してみるか・・・」

この辺の記憶はやや怪しいが、時間と戦っている感が全く無いカーテン越しに聞こえた医師の言葉。
流石にいら立ちを感じた。

あの時、看護師さんがせっつかなければまだ時間はかかっていたのかも知れない。
救急車はそれから数分で到着したのだった。

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40~50分かけて搬送された先はJという大学の付属病院だった。

心電図を取ってすぐに医師はこう告げた。
「これからカテーテルを通して調べるけど、間違いなく心筋梗塞だろう」
と。

その後何か手続きのようなものがあったような気がするが記憶は曖昧だ。
アレルギーはあるか?麻酔で具合が悪くなったことは無いか?などの矢継ぎ早の質問が終わるとすぐに手術室へと運ばれた。
手首から入ったカテーテルが肩を通る時に違和感を覚えたが痛みは無かった。

モニターを見ながら二人の医師が話をしている。
時々私にも何か説明をしてくれるのだが、頭に入ってこない。

麻酔のせいで痛みを感じなくなったためか、それとも単なる寝不足のせいかわからないが、この時の医師との会話はほとんど覚えていない。

ただ、なぜだか「寝たらダメ」と思い込んで、必死で寝ないように頑張っていた気がする。
今考えると別にこの時寝てても良かったんじゃないかと思う。

カテーテルを通しながら、金属の網でできたステントというものを血管に入れ、血流を再開する手術をしたらしい。
説明を受けた時にはただただ眠くて仕方がなかった。

曖昧に「ありがとうございます」とだけ返答をしたが、頭の中は「これで寝られる」という思いだけだった。

柱の時計を見ると午前6時を指していた。

(続く)

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