5年前のとある出来事~その16 退院できない?~

入院して二週間が経過したころ、体調はすっかり良くなっていた。
身体はもちろん心も元気!

そうなってくると病室での時間が退屈極まりなくなってくる。
先にも書いたが、自宅のパソコンにつないでちょっとした動画ぐらいは見れたし、テレビも自由に見れるのではあるが・・・。
兎に角時間の流れがゆっくりに感じて仕方がない。

そんな折、経過を見た医師から
「予定ではあと一週間いていただく予定でしたが、経過も順調だし暇そうなので数日早く退院しましょうか?」
と非常にありがたい申し出があった。

これには喜んだ。

会計窓口に行き、退院の手続きの説明を受ける。
当然だがお金を支払ないわいと無罪放免とはならない。

聞くと選択肢は2つあるとのことだった。
1)まずは全額支払って、後から高額医療限度額の適用を受ける
2)保険組合に連絡を取り、先に高額医療費限度額適用を受けて減額された金額だけ支払う

後者には手続きに時間がかかり、退院の日程が後ろにずれる可能性があるとのことだった。

迷う事はない。
「まずは全額支払います!!!」
満面の笑みを浮かべてそう言ったのだ。

「それでは概算ですが計算しますね・・・・。
えっと・・・マンボウさんの場合は差額ベッド代含めて170万円ほどですね?」

「え?もう一度お願いします。」
「まず170万円払って退院後高額医療限度の手続きをしたら後日還付されます」

言われた額は正しくは120万円だったかもしれないが、いずれにしてもポーンと払える金額ではなかった!

もしかして体内に埋め込まれたのはステントではなくダイヤモンドやサファイヤなどの宝飾品だったのか?
ちなみにその時乗っていた自家用車は40万円で購入した中古車だ。
車で換算すると身体の中に4台ほど埋め込んだ計算になる。

仮面ライダーの怪人だってそんなに改造手術にはかからないんじゃないだろうか?

いや、もしかしたらあの個室には隠れ扉があって、奥にはダブルベッドと高級ワインが置かれていたのかも知れない。
俺がベッドから動けないから見落としていたのかも知れない!

きっと、奥にはスウィートルーム並みの設備があったに違いない!
なんだったらソムリエの一人も待機していたのではなかろうか?

混乱する頭のまますぐに会社に電話をした。
「このままじゃ退院できないかも知れない!一生ここにいることになるかも知れない!」
「え?そんなに悪いのですか?」

まぁ、そうなるわな。。。

経緯を説明して、すぐに保険組合事務所に行って、自分の代わりに手続きをしていただくようお願いをした。
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素早く手続きをしてくれたおかげで数日でその書類が病院に届いた。

支払総額は20万円ちょっとだった。
安くは無いが、当初提示された金額を考えると驚くほどの値引きである。

日本の医療制度に感謝せねばなるまい。

斯くしてこの数日後無事無罪放免となり、退院の日を迎えるのであった。

(続く)

 

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