5年前のとある出来事~その20 完結編~

病気をし、入院をして何が変わったか?
確かに人生観はほんのちょっぴり変わった気がする。

「こうあるべき」とか「こう生きた方がいい」という事はあらためて感じたような気もする。
とはいえ、実はそんな事は入院する前の元気な時から思っていたことばかりである。

ここで小説やドラマなら、これを機に生まれ変わったように立派な生き方をするのかも知れない。

だが、そう簡単に人間って変わらない。
悲しいかな、実は退院してからの行動はそれほど変わってはいない。

相変わらず自分に甘いし、だらしなく生きているし、無駄な一日を過ごすことも多い。
嫌いな自分は嫌いなままだったりする。

ただ、一つだけ変わった考え方もある。

あの時「今死んだら後悔するな・・・」とは確かに思った。
ところが、具体的にそれが何か思い浮かばないのだ。
なんだか漠然と悔いの残る事が色々とあるような気持ちだけがあったのだ。

病院のベッドに横たわりながら考えてみた。
よく「悔いのない人生」という表現が使われるが「悔いのない」ってなんだろう?

過去の色んな後悔の残ることを取り除いていくこと?
やり残したことをやること?
上手く表現できないけど、確かにそれまではそういうマイナス要素を取り除こうとすることが多かった気がする。
でも、それってどこまで行っても「ゼロ」にはならない気がした。

その考えだと、やっぱりいつ死んでも後悔はすると思う。
後悔の荷物を減らしていってもゼロにはならないだろうなとは漠然と思った。

なのでちょっとだけ考え方を変えた。
イイことがあった事を積み重ね、それをちゃんと楽しかったと思うように意識するようにした。

後悔の荷物ややり残したことの荷物を減らそうとする限り、200歳まで生きても「悔い」が残る気がするが、良かった出来事や幸せに思った気持ちを積み重ねると「あの時死ぬよりちょっとだけ良かったな」と思える気がした。
この先いくつまで生きるかなんてわからないけど、少なくともあの時死ぬよりはマシな気持ちで終焉を迎えられる自信はある。

カッコつけて書いてはみたものの、やっぱり死ぬ瞬間はやり残したことや悔いの残る事が思い浮かぶんだろうなという事もわかっている。
それでも、今日はこんな美味しいものが食べられた、今日はこの人の笑顔が見れた、今日はこんな事に挑戦してみたetc.・・・そんな事を意識してこの5年間生きて来れたとは思っている。

人生観が変わったと冒頭に書いたが、そんな大げさなものでは無い。
マイナスの荷物を下ろす事を考えるより、プラスの荷物を積み重ねる事を考えるようにしただけだ。

嫌いな自分は嫌いなままだけど、好きな部分もちょっとだけ認められるようになった気がする。

若い医師が言った「助かったのは何か使命があるのかも」はもしかすると世のため人のための使命とかそんな大げさな事ではなく、そういう風に自分自身が納得できるようになるための時間だったのかもなぁと漠然と思ったりする。

私なりに得たそんな教訓を最後に書いて「5年前のとある出来事」を終わりにしようと思う。

思いがけず長い長い話になってしまったがこんな駄文を楽しみにしていると言ってくれた方、最後まで読んでいただいた方には心から感謝です。
お付き合いありがとうございましたm(_ _)m

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