ラーメン大王@厚別 ~歴史を思い出しながら~

今から50年近く前の1975年前後だったと思う。
厚別区厚別中央2条3丁目付近に一軒のラーメン屋がオープンした。
のれんには「大王」と書かれていた。

カレーラーメンで有名な苫小牧の「味の大王総本店」の流れを汲むお店と聞く。
なのでカレーラーメンも人気メニューだ。

さてこのお店。
味噌ラーメンを開発した味の三平や、純連やすみれなどの札幌を代表するお店などのように、歴史が詳細に記録されたり資料が残っているお店ではない。

ただ私個人としては少なからず影響を受けてきたお店なので、私の記憶の糸をたどりながら歴史をたどってみたいと思う。
あくまで私の記憶だけで書いているので記述に間違いがあるかも知れないがお許しいただきたい。

その当時はこのエリアは「旭町」と呼ばれ、厚別エリアの繁華街の中心部だった。

訪問したラーメン店の壁には「3杯食べると無料、5杯食べると1年間無料」と書かれたポスターがあり、その横にはおおきなしゃもじで達成者の名前が書かれていた。

流石に5杯は無理だなぁと思いつつ「1年間無料」というフレーズは商店街の「一等○○旅行」の福引より魅力的に感じたのを覚えている。
ハワイ旅行が当たるよりよっぽどワクワクした。

その後1~2年で同じ旭町エリアの厚別中央3条2丁目付近、私の通っていた中学校のすぐ裏へと移転した。

中学校では吹奏楽部に所属していた私。
練習は毎日放課後に行われていたが、土曜日はいわゆる「半ドン」で授業は午前中だけで昼食後すぐに練習があった。

普段は弁当を持参して登校していたが、土曜日だけは弁当を持たずにそれこそ毎週のようにここ「大王」でラーメンを食べてから練習に臨むのがルーチンワークだった。

味噌・醤油・塩にカレーラーメンのローテーションで食べていたように思うがその比率は味噌5に対して醤油3、カレーラーメン1.5、塩ラーメン0.5という感じだったと思う。

ユニークだったのは「学生50円割引」というサービスがあったのだが、「学生証や生徒手帳の提示が必須」というのがあった。
学生証を提示すると店主さんはそれこそ「穴が開くほど」じっくりと見た後に「はい、50円引きで450円」と告げるのであった。

そんな中、時々学生証を忘れてくるヤツもいた。
詰襟学生服を着た我々が集団でいくのだから全員が学生で間違いないのであるが、店主さんは頑なにそれを学生とは認めてくれなかった。
イジワルというのではなく、店主さんの几帳面な性格の一面だったと思う。

 

そういう性格もあるのだと思うが、味のブレは全くなく、いつ食べても同じクオリティで同じく美味しかった記憶がある。

とにかくここのラーメンが大好きで毎週土曜日を楽しみにしていた。
まさに今の私の「札幌ラーメン好き」の原点となるお店である。

その後、サンピアザ(地元商業施設)に移転し数年の営業を経て現在の場所に自前の建物を建てて移転した。
途中私は東京に19年勤務することになり、通う頻度は減ったものの、15年ほど前に札幌に戻ってきてからは未だに数ヶ月に一度は通っている。

先代が無くなられて随分時間が経つが現在は二代目が厨房を取り仕切り、先代の奥様(二代目のお母さま)がホールとレジを担当している。
(今はアルバイトさんか従業員さんがホールを担当することも多い)

二代目となって、先代と内容や味も少しずつ変わった事は事実だと思う。
茎わかめがわかめになったり、自分ですりおろしていたであろう緑色の卓上ニンニクが白ニンニクとなり、ものすごく細かった白髪ネギが食感を残すやや太めの細切りネギになったり・・・。

醤油ラーメンやカレーラーメンに関しては二代目のオリジナリティも加えられたのだろう、先代の味付けとはやや異なっている。

だが!!
ここの味噌ラーメンに関しては根っこの部分はほとんど変わらない気がする。
白みそベースのちょっと甘みを感じるスープ。
表面を覆う油のビジュアルもほとんど一緒である。

気のせいかもしれないが、この「油の散り方」さえもこの店だけのビジュアルに思え、それだけでなんだかワクワクするのだ。

時代と共に変化やチューニングなどはされていると思うが、恐らく味噌ダレだけはレシピを全く変えずに50年近く守り続けてきたんじゃないかと思う。

この味噌ラーメンだけは変わっていないしこれからも変えて欲しくない。
まさに私のソウルフードであり原点であり、基準となるグリニッジ天文台のような存在なのだ。

中学生の頃、文字通り「青春を掛けていた」毎日。

今はあの頃のように夢中になれる事も熱くなる事も少なくなってしまった。
それでもここのラーメンを食べるとあの頃の日々の記憶がはっきりと蘇ってくる。

特に寒い日に凍えながら食べた味噌ラーメンの美味しさはこの先も忘れる事はないだろう。

そんな私個人が食べ続けてきた長い歴史、青春の味という背景があり・・・。
あまりにバイアスがかかり過ぎていて客観的な評価は難しいが、それでもここの味噌ラーメンはやっぱり美味しいのではないかと思う。

「大王」という名前もあり、カレーラーメンを食べる人が多く、それで評価されることも多いけど、是非一度味噌ラーメンを食べて欲しいところ。

ここ厚別・新札幌エリアで長く愛され続けた味噌ラーメン。
先代から受け継がれた味がここにある。

あ、蛇足だけど・・・。
先代の時代から唯一気になっていたのが「茹で過ぎじゃね?^^;」というしっかり茹でられた西山製麺の麺。

二代目はその点も受け継いでいるようで「そこは受け継がなくてよくね?」とか思う事もあり「固め」でオーダーすることもあったが・・・。
今ではそれも含めてやっぱり大王の味なんだと思う。

私個人が人生で一番食べたラーメン・・・ではないかも知れないが、間違いなく人生で一番長い期間愛し続けているお店なのである。

このところ「北の大地」「名水ラーメン」と立て続けに地元の愛すべきお店が閉店してしまった。
このお店には、これからもここ厚別新札幌エリアで長く続いて欲しいと切に願う。

味噌ラーメン発祥の「味の三平」のように歴史に名を遺すようなお店じゃないけれど、歴史あるお店で長く愛されているのは間違いない。
記憶の糸をたぐりながら、こうやって記録しておくこも大事かなと思い書いてみました。

DATA
ラーメン大王
北海道札幌市厚別区厚別中央1条7丁目2−43

「今日の一言」
  雪の日の
    かじかむ手
      箸いっぱいの麺

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