5年前のとある出来事~その6 時間との闘い~

最初に搬送された先は熱海市内の病院だった。
規模はわからないがそれほど大きな病院ではなかったと思う。

その頃には胸の痛みは少し和らいでいたように思う。
だが、その一方で意識が少し朦朧としていたのだろう。
記憶はどこか曖昧で、夢と現実がやや混乱しているような感じだった。

「サンで行きます!イチ・ニ・サン!」
ストレッチャーから病院のベッドに移される時も救急隊員や看護師さんがあわただしく動いているのはわかったが、どこか他人事のような気持ちで聞いていた。

自分の身体が動かされ、耳も聞こえているが自分の事とはどこか思えずにいた。
心電図を取った医師がこんな事を言っていた。
「あ・・・心筋梗塞だ!ここからは時間との闘いだ!」

続けて医師はこう告げた。

「この病院では対応できないので、大きな病院に救急車で再び搬送してもらうから」と。

自分に向って話をしているのはわかるのだが、どこか他人事のような感覚を持ちながら、それでも「はい・・・」と小さくうなずいたのは覚えている。

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時間がやけに長く感じる。

すぐに救急車で搬送されると思っていたのだったが、到着した時と同じベッドにただ寝かされているだけだ。
壁の時計はすでに到着してから1時間近く経っていたように思う。

(時間との戦いじゃないのかよ!戦ってくれよ~)

(続く)

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