八歳で閉じた扉と、開け直してくれた先生の話~「第二章|歌をやめた、八歳の決断」
話はさかのぼる。
中学時代の恩師、M先生との出会い。
取捨選択がその後の人生に影響を与える・・・そう今でも思っている出来事がある。
いや、その話をするには、もう少しだけ時を戻さなければならない。
時は小学校三年生。
音楽の授業で、歌のテストがあった。
物心がついた頃から、アニメソングを家族の前で歌う、ごく普通の少年だった。
人前で歌うことに、特別な羞恥心はなかった。
自分が音痴だという自覚もなければ、そもそも「音痴」という概念すらなかったのだと思う。
ところが、その歌のテストで、自分の歌を笑われた。
しかもクラスメイトだけではない。
オルガンを弾いていた先生が、手を止めて爆笑したのだ。
大きなショックだった。
そして、生まれて初めて「自分は音痴なのだ」と思い知らされた。
その瞬間、私は決めた。
音楽と距離を置く人生を選ぼうと。
同時に、人前で何かを発表することへの恐怖心が、トラウマとして心に刻まれた。
わずか八歳。
「歌う」という行為を人生から排除し、
「人前で何かを披露する」ことを避ける決断をしたのである。
その後、小学校時代の歌のテストは一切だんまり。
合唱でも口パクだけで、声を出すことはなかった。
ただ一つ、付け加えておくとすれば・・・
音楽を「聴く」ことまで嫌いになったわけではなかった。
—この小さな逃避が、後に思いがけない救いを呼び込むことになる。




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