ラーメン華龍の閉店 ~老舗の名物母さん、50年の歴史に幕~

いつだって人は「失ってから大切さに気付く」ものなのかも知れない。

1+1は2じゃなくて4にも5にもなることを知っている人は多い。
でも5-1が4じゃなく2にも1にもなってしまう事には中々気づいている人は少ないと思う。

その減った「1」の大切さ・・・失って初めてその事に気付き反省をする。

つくづく愚かな生き物だと思う。
いや、愚かなのは自分だけかも知れない。

今、自分が手にしているもの、持っているものがいかに大切で大事なものなのか・・・。
最近その事に気づかされることが本当に多い。

「今あること、今持っているものに日々感謝している。」
そう思って最近は過ごしてきたつもりだった。

そんな時に飛び込んできた「ラーメン華龍閉店」のニュース。

「え?うそでしょ?」
そう思うとともに心のどこかで
「やっぱりか・・・」
という気持ちもあった。

創業は1971年8月と聞く。
昨年50周年を迎えた老舗中の老舗だ。

TVや新聞では日々、小麦の値上げ・油の値上げ・・・・様々な物価の上昇が報道される中、いまだにワンコインの500円で提供しているのも驚きだ。

名物母さんが一人で切り盛りするお店。
実は2000年前半ごろから歩道橋の拡幅工事とかで立ち退きを迫られていたらしい。

その時点でもかなりの老舗だったし、ご高齢の母さんはお店をたたむんじゃないかと巷では噂になっていたらしい。

ところが2013年、現在の場所に移転リニューアルをしてお店を続けたのだから驚いた。
「まだまだ頑張るわよ!」という母さんの意思表示でもあったように思う。

移転してきれいになった外観・・・。
だが、味はそのままで、母さんのきびきびした動きもそのままだった。

そして値段までもがそのままの500円だったことにも驚いた。

会社が近いにも関わらず、ここ数年はすっかりご無沙汰だった。

久しぶりに見た母さんは相変わらず元気そうな笑顔だった。
だが、動くたびに「あ~足が痛い」「あー腰がツライ」と身体は本当にきつそうだった。

動きもどうしてもスローモーションになるが、身体が覚えているのだろう。
スプーンから掬う白い粉や、ポットから注ぐ醤油ダレの量に迷いは感じられない。

ほんのりとごま油がアクセントのように効いた醤油ラーメン。
豚骨や野菜の甘みと思われる旨味がちゃんと感じられる、まさにTheノスタルジック札幌ラーメン。

我々のような札幌のオールドファンならだれもが「美味しい」と言うであろう、札幌ラーメンらしい札幌ラーメン!

今あるものに感謝している・・・そんな風に思って最近過ごしてきたつもりだけど、このお店にしばらく来ていなかったことを後悔した。
感謝できていなかったなぁ・・・。

それでも最後にこのお店の閉店前にもう一度食べることができて本当に良かった。

本当は無くなって欲しくはないけれど・・・。

身体の限界までお店を続けてくれたのがわかるだけに、これ以上続けて欲しいとは言えるはずもない。
50年以上の長きに渡り、みんなを喜ばせてくれて来たこと。
感謝しかない。

常連さんと思しき方が名残惜しそうに
「身体・・・悪いの?」と尋ねると、間髪入れずに
「悪いのは頭と口だ!」と笑いながら答えていた母さん。

ラーメンの味だけじゃなく、この母さんに会いたくて通った人も少なくないのだろうとあらためて思った。

お疲れ様でした!
美味しかったです^^

DATA
ラーメン華龍
札幌市中央区北四条西14丁目1-2

「今日の一言」
  半世紀
    女将の華は
      咲き続け

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